形のない足跡

七辻雨鷹(ナナツジウタカ)。マイペースで子供っぽい人のまた別のお話。「ようこそ、カオスへ。」

メトロでの出会い

東京メトロ創立十周年記念ショートストーリーコンテストに応募した作品で、中学三年生のときの作品です。

 

 

 久しぶりに来た大手町の駅は乗り換えの人であふれている。私もその一人だ。

 「スカイツリーに行こう!」

みさきが私を誘ったのはつい昨日のことだった。計画性が無いのはいつものことだけど、それにしても突然だった。 混んでるらしいけど行けるの、といった私にみさきはもちろん下までだけど、とぃたずらっぽく笑った。8月から行く、留学のための準備で慌ただしい生活を送っている私を元気づけるつもりでいるのだろう。みさきなりの思いやりだと思う。

「Excuse me.」

階段へ向かって歩き出した私の後ろで声がした。振り返ると背の高い外国のおじさんが立っていた。ヨーロッパかなんかの人だろう。

「Could you tell me the way to the Tokyo Sky Tree?」

確かに私に向けて言っている。聞き取ることが出来たのは勉強の成果だ。でもしゃべることに関してはあまり自信が無い。誰か他の人に聞けばいいのに、と考えかけて私ははっとする。これから留学に行くのにこれくらいできなくてどうするんだ、私。これから先、東京オリンピックの時には外国人に道案内してあげるんだ、とか言ってたのに。

地下鉄一つ乗るのに、ここが外国だから困る人がいる。駅員さんに聞けば教えてくれるのに、この人は私を頼ってくれている。

大きく息を吸って、答える。

「Actually, I’ll go there too. Let’s go together.」

 それから、私はつたない英語を使っていろいろなことを話した。彼はエリックといった。エリックは自分の国のことをいっぱい話した。私は、みさきのことを話していた。年は離れていても、私たちは友達みたいだった。

 地下鉄一つで誰かと出会える。

「みさきー!」

みさきは駅で待っていて、エリックとはそこで別れた。

 これから、もっといいことがありそうだ。