形のない足跡

七辻雨鷹(ナナツジウタカ)。マイペースで子供っぽい人のまた別のお話。「ようこそ、カオスへ。」

リカ

筑波大学文芸部アドベントカレンダー2021/12/16寄稿作品です。 少しも筑波大学の人間ではないのですが、 参加できる方・現部員・元部員・OB・OG・筑波大学文芸部に友人がおり製本や校正を手伝わされている方・筑波大学文芸部の人間の作品を読んだ方など自分…

2/2~4 #道連れギャラリー に参加します

それでも世界が続くなら というバンドのライブ期間中、吉祥寺のライブハウスで、小説とラジオドラマの展示、物販をします。 ……告知が苦手すぎる。 ーーーーーーーーーーーー ‪それでも世界が続くなら主催‬ ‪「道連れギャラリー合同展」‬ ‪2月2日〜2月4日‬ ‪…

ウォーキングドリンカー

キッチンドリンカーになったのはいつからだったか。祖母はキッチンドリンカーだった。台所で夕食を作りながら、風呂上がりの火照った頬の内側にアサヒスーパードライを流し込んでいた。いつからか、私も台所に立って、ジンジャーエールの缶を持っていた。 缶…

夜の底に深く沈む

文学部OB誌「紙+ペン=可能性」に寄稿した作品です。 BURNOUT SYNDROMESの「i am a HERO」 BURNOUT SYNDROMES ~i am a HERO~ - YouTube から着想し、歌詞を一部引用しました(改行して下げている部分)。 目を開けるともう夜だった。遠くから国道を走る車…

私が死ぬ時が来たら

個人誌2冊目「かなしみの速度」より 私が死ぬ時が来たら 私が死ぬ時が来たらあなたにはさよならを言わないさよならのかわりに 風に託けて本当の理由を教えよう 私が死ぬ時が来たらあなたにはさよならを言わないさよならのかわりに あなたの幸せを祈ってエン…

ターミナル(小説)

壁一面に本棚が並んだ小さな部屋でわたしは目を覚ました。 ここはどこなのだろう。膝を抱えて辺りを見渡す。積み上げられた本にはギターが立てかけてあり、ところどころ雪崩が起きている。その間に、空になった薬のシートがいくつも転がっていた。 わたしは…

東京を知らない君へ

中学二年生の冬の社会科見学のレポート(形式は自由)として書いた小説です。 当時のわたしはチャットの語尾に☆をつけるような中学生でした。使われている記号が厨二っぽいのはそのためです。ご容赦くださいませ。 †前夜 紅茶を入れようと、ペンを置く。外を…

メトロでの出会い

東京メトロ創立十周年記念ショートストーリーコンテストに応募した作品で、中学三年生のときの作品です。 久しぶりに来た大手町の駅は乗り換えの人であふれている。私もその一人だ。 「スカイツリーに行こう!」 みさきが私を誘ったのはつい昨日のことだった…

「一つになれないならせめて二つだけでいよう」

SCHOOL OF LOCK!の企画で「一つになれないならせめて二つだけでいよう」をテーマにした作品を募集した際に応募した作品です。当時中学三年生だったと思います。 夕闇の中に光が一つ 取り残された教室 この世界に自分たちしかいないみたいで 何度でも踊って …

ターミナル(詩)

優等生はやめたというより所詮は偽物だったそれなら人間をやめたいなりたいものもないけれど 「頑張りなさい」「やればできる」追い風に転んで 空を見る迫り来る雨雲 青空は向こう側にしかないの? 上手く歩けなくて 世界が回って膝を抱えていたら 遠心力に…

幽霊からの手紙

拝啓 暦の上ではとうに秋ですが残暑に陽炎が揺らめいています。いかがお過ごしでしょうか。はじめまして、私は幽霊です。名は河原健人といいます。普段はあなたのご近所の団地の一室に居りますが、そろそろ夏も終わりですので最後に涼しい手紙でもどうかと思…

線香花火からの手紙

拝啓 残暑の厳しい日が続いていますが、お変わりありませんか。わたくしはあなたの家の近くで売られている線香花火です。このまま夏が終わってしまっては困ると思い、お手紙を差し上げました。 というのも、わたくし売れ残ってしまえば、処分されるか、値引…

八.美冬と真雪-8732

いつの間にか真雪は美冬を見ていた。そこにいる「美冬」は真雪ではなく美冬だった。真雪は宙に浮かぶ光の玉に姿を変えていた。「あたしもう行かなきゃならないんだけど、一緒に行く? ちょっと早いけど。」「いや、息上がっちゃって、ゆっくり歩きたいから先…

七.旅人算-8732

家族には感謝を伝えることができた。残るは咲季だ。明日は先に行くと言っていたから、咲季は恐らく八時に登校する。家から学校までは四十分かかるから、七時十分には家を出よう――しかし、「美冬」が起きたのは七時だった。美冬は低血圧で朝が苦手だったのだ…

六.薔薇の花束

渋谷で乗客の大半が降り、真雪は空いた席に座った。ポケットからスマートフォンを取り出す。手帳型ケースのカード入れには図書カードが入っている。それを取り出すと、一緒に付箋紙が出てきた。青い字で「3331」と書かれている。真雪は迷わず、パスコー…

五.小宮咲季-8732

講義室を出て階段を下りる。普段は白く色味のない校舎の階段や廊下も色とりどりの装飾がなされている。生徒たちは皆、高揚と期待の混じった予感を共有していた。そわそわした空気が校舎全体に充満している。 小宮咲季。ほとんど会ったことはなかったが、美冬…

四.現存-8732

美冬のやり残したこととは一体何なのだろう。手掛かりと呼べるものは手元のスマートフォン以外に何もない。他人のスマートフォンを覗くのは躊躇われるが、美冬はわざわざパスコードを教えたのだから構わないだろう。スマートフォンにはメモやLINEなど生…

三.花本美冬-8732

「花本……おい、花本。」まだぼんやりとしたまま目を開けると、男子生徒が立っていた。日に焼けた肌と短く切った髪はいかにも活発そうな感じがする。額に滲んだ汗を拭い、彼は無言で何かを突き出した。ミルク味のアイスバーだ。戸惑い、受け取り損ねていると…

二.交点-8732

夢を見た。 学校の5階の廊下を歩いていた。どこへ行くのかはわからない。しかし、行かなければならないという気持ちがあった。角のエレベーターホールの前、窓のそばに美冬が立っていた。白い無地のワンピースを着て、胸元まである髪を下ろしている。「真雪…

一.花本真雪-8732

壁紙の白が明るくなるのを眺めていた。目はとうに覚めている。夜明けと共に目が覚める真雪の朝は早い。家の中は物音一つしないが、外からは新聞屋のエンジン音が聞こえていた。いつもならすぐに起き上がって着替えるところだが、そういう気分でもなかった。…

8732をカクヨムで

26日(水)から2日に一度の更新で、小説投稿サイト「カクヨム」にて、小説『8732』の連載をします! 読んでくれると嬉しいです。 よろしくお願いします。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883700620

クリスマス号 巻頭言

街は落ち着かない子どものようで人々は皆浮き足立ってあまりに幸せそうだからきっと僕も笑っているきっとあなたも何でもない凍てつく冬の日が誰かが幸せになる日になってもう2000年以上経つ神も救世主も僕はあまり信じないが今日くらいは感謝しても良いんじ…

文化祭号 巻頭言

黒歴史は鮮度が高いうちに積極的に晒していく所存です。一足先にこちらにアップします。言葉の色がぶれていて、その上深夜テンションそのままなので、これを書いたときの自分を3発ほど殴りたい気持ちで一杯です。巻頭言​言葉はただの言葉だ。意味を持つ音の…

Business

最近(3月)の作品です。手直ししたけどあまり納得いかず……。OLにならないと書けないのかもしれないですね。何とか良くしたいのでアドバイスをお願いします! 夜の街は原色のネオンサインが溢れ、影はその色を一層深くしていた。日付が変わるまでにそれほど…

遅いクリスマスの話

『島取り』からちょうど1年後に書いた作品です。真夏に真冬の話を書くのは大変でした。おかげでよくわからない作品に仕上がっております。こちらもZ会の交流誌に掲載されたのですが、こんなおかしな作品で良かったのでしょうか……。 気象庁がトウキョウに十セ…

島取り

手始めにお気に入りの作品を。 この作品は中学2年生の夏に書いたもので、たった2000字に1か月以上かけたのを覚えています。総編集時間は17時間以上にも上りました。その甲斐あってか、Z会の交流誌にも掲載され、図書カードも頂きました。(*'▽') もう3年…

まえがき

こんにちは。若しくは初めまして。 七辻雨鷹(ナナツジウタカ)と申します。将来の夢は児童文学作家になることです。 小説や童話を書きます。そう呼べる水準に達しているかどうかは些か疑問が残りますが。 ここではそのうちの幾つかを公開します。 わたしは…